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繁忙期の物流クライシス

2024.08.26
業種
各業界卸業者病院・介護施設指定管理業者・ビルメンテナンス業者各種施設及び事業所
商品の種類
トイレットペーパーペーパータオル介護用紙製品ティシュペーパー
特徴

例年、お盆が近づくと各メーカーから夏休み期間の連絡と、それに伴う受注締切日の案内が届くのが8月の風物詩でしたが、この連絡が前月の7月に届くようになりました。お盆前の配送期間にそれだけ余裕を持たせて受注、出荷を進めないと、休み前にお客様に届けることが難しくなってきていることが見えてきます。

お盆明けに振り返る物流事情

物流の2024年問題という言葉がメディアを賑わせて久しいです。物流・輸送力を構成する要素は、

配送人員 x 配送時間

が大部分を占めています。

前提として、人口減少の我が国においては、従来と同様の成果を従来と同じ方法で達成する場合、当然人手不足が発生します。人手不足は慢性的に存在しており、現在の欠員率平均はおおよそ3.6%、運輸業・郵便業は6.0%と、宿泊業・飲食業の6.1%に次ぐ数値です。(令和6年5月:厚生労働省労働経済動向調査)

時間について広く認知されている2024年問題。

こちらはドライバーさんの年間時間外労働時間上限が960時間に設定されました。ということは、今まではこの960時間以上の時間があることで成立していたということでもあります(月に換算すると80時間の残業です)。この時間外労働時間の是非はともかく、何も対策をしない場合、輸送力は、2024年度には14%、 2030年度には34%不足する可能性があるといわれています。

この輸送力低下がそのまま早期発注依頼や分散発注依頼の増加という現象として表出しました。

もはや新たな夏の風物詩

上記のような出荷物流事情の悪化に伴い、今夏もお盆前の繁忙期にいくつかの物流トラブルに見舞われました。例えば・・・

①メーカーからの直送にて手配していた商品の遅納遅延が“頻繁”におこり、納品時間が過度に遅くなったり、指定された日に届けられないトラブルも発生しました。

②路線便にて入庫予定の商品が当社に届かず、当社便での配送に間に合わなくなるため、出荷元に再三荷物の状況を問い合わせたところ、運送会社の和歌山のターミナルで滞留していることが判明。当日中に当社まで配達できるか不明との連絡を受けたため、当社担当営業がターミナルまで出向き商品を引き取った後、お客様へ納品。

コントロールできること

物流問題のコアとなる人手不足、労働時間、さらにいうと2010年度以降40%まで低下している積載効率など、これらは私たちにコントロールできる事象ではありません。

大切なことは、アンコントロール領域を嘆くことではなく、コントロール領域でできることに取り組むことです。当社では、

①メーカー直送にてお届けしている商品については、お盆に限らずGWや年末の繁忙期で、特に物量のピークが想定される日を指定したご注文についてはトラブル回避のため、

“直送を取り止め当社からの便でお届けする”

ことに変更しました。

②大型連休前に想定されるお客様からの需要予測の見直しと、物流事情がさらに悪化することも考慮し、繁忙期の自社在庫量を積み増ししています。可能な限り出荷元であるメーカー側の負担を少なく出来るよう大ロットで発注し外部委託倉庫へ保管します。当社配送便の帰り便が頻繁に委託倉庫に立ち寄り、商品を自社の倉庫へ移送することで、在庫量の確保に努め、繁忙期のトラブルを回避しています。

なくてはならない物流に、私たちができることは?

「物流の2024年問題」や「労働人口の減少」など様々な要因により、物流事情は今後も難しい状況が続くことが想定されます。

現在発生している物流トラブル、特に繁忙期のトラブルについては出荷元のメーカーも頭を悩ませており、トラブルを避けるために個数制限(分散発注)やリードタイムの更なる長期化を我々に要望してくる傾向にあります。しかし我々はお客様に対して過度な早期発注を促したり、在庫の積み増しを要求することは、“卸業者”としての存在そのものの否定でもあり、まったく本意ではありません。

生産者とユーザー双方の不便や不満を無くし、スムーズな商流を実現することが当社のミッションと考えています。こちらの都合でお客さまに無理を強いたり、想定外のトラブルへの対応に奔走するのではなく、いつもと変わらぬ安心を届けていくことを考え、行動していくことをこれからも続けていきたいと感じた、2024年の夏でした。

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